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2018/02/01

せん妄 認知症と決めつけず相談を

 「せん妄」とは、心身の不調や薬の副作用、入院といった環境変化などの要因で、意識が混濁した状態になることを指します。

 せん妄状態になると、実際にはいない虫や人が見える幻視を体験したり、引き出しの開け閉めなど脈絡のない行動を繰り返したりすることがあります。こうした行動は、しばしば認知症の症状と勘違いされることがあります。

 ある高齢男性は、何もない机の上を見て「線香が置いてある」と言ったり、長ズボンの上に半ズボンをはいたりすることがありました。周囲は認知症を疑いましたが、詳しく調べてみると、脱水状態を原因とするせん妄の可能性がありました。

 そこでかかりつけ医に相談し、もともと服用していた排尿を促す薬の量を調整。その上でしっかり水分補給してもらうようにすると、行動に改善が見られました。

 せん妄には、病気によるもの、年齢によるもの、環境の変化によるものなど多様な原因があり、それぞれ適切な治療をすることで、改善されることがあります。認知症と決めつけず、要因を見極めることが大切です。おかしいなと思ったら、早めにかかりつけ医やケアマネジャーに相談してみましょう。

 

(但馬長寿の郷 作業療法士)

(神戸新聞 平成30年1月27日版転載)